玲-4

2005年2月2日 連載
あれも
これも
それも
みんな
懐かしい
ドコが?
ナンデ?
ナンデだろう。









あれれれ?何で僕泣いてるの?
何?何何何?何でだー!
僕は目の前にいる"ナツカシイ"人に言われ初めて自分が泣いていたことに気付き、
そして混乱していた。
何故自分が泣いているのか。何故初めて会った目の前の人のことを"ナツカシイ"
と感じたのか。
全部が僕の頭の中で雁字搦めになって混乱していた。

「とりあえず目立つから、隣座っていいか?」
「う・・うん・・・。」

僕に話しかけてきた彼は、そう言うと空いている僕の隣の席に腰がけた。
どどどどうしよう。なんか物凄く迷惑をかけた気がするんだけど・・・。
これってやっぱり気のせいじゃないよ・・ね。
ははは・・・。
僕の隣に座った彼は無言のままで、どうすればいいのか混乱している僕もやっぱり無言のままで、
とても居心地がいいとは言えない状況だった。
そういえば、どうしてこんなことになったんだっけ。
あー、寝てた記憶しかないよー。

「あのさ・・・。」
「・・・うん?」

隣の彼は思い詰めたような顔をして僕の方に振り向いて話しかけてきた。
あ、そういえば名前聞いてなかったっけ。って・・僕の所為か。
僕が叫んだりしちゃったから聞きそびれたんだ・・・。

「俺、あんたになんかした?」

・・・・はい?

「前にあった時とかになんかしちゃってたら悪いんだけどさ、うん。
なんか心当たり無いんだけど。初対面、だよな?」
「いや・・そうですけど。」

・・・・・心当たりがあったら何してたんだろう、この人。
なんか物凄く不安になったんだけど。
そんなことを考えている僕とは対称的に、目の前の彼はほっとしたような顔をした。

「よかった・・・。突然泣かれるから俺、なんかしたかと思ったよ。
あ、そうそう。さっきも聞いたんだけどあんたも関桜高校の新入生だろ?」
「・・うん。」
「実は俺もなんだよね。俺は三城香(みき きょう)。あんたは?」
「僕は・・・松澤玲、だよ。」

下の名前を言うのに僕は俯いてしまった。男なのに女の子のような自分の名前が恥ずかしい。
どうせならりょうとかあきらとかもっと男っぽい読み方にしてくれれば良かったのに。
なんとなく思い浮かべた母さんは、心配そうな顔をした女性だった。
・・・面と向かってそんなこと、いえないよなぁ。
はぁ、と思わず溜息がでた。

「もしかして名前にコンプレックス感じちゃってる、とか?」
「・・う。」

隣に居る彼、もとい三城香は無意識になのか拳を顎に当てて、
考え込んでいるような表情で僕に聞いてきた。
む、妙に様になってる・・・。なんか悔しい。・・しかも図星だし。

「うん。どうせならもっと男っぽい名前にしてくれたら良かったのにとか思うよ。
"あきら"とか"りょう"とか。」

僕がちょっと投げやり気味に言うと彼は笑いながら、

「やっぱそう思う?俺の場合はさ、微妙に違うんだけど。
俺の名前って"香り"って書いて"キョウ"って読むわけよ。
だからよく"かおり"ってふざけて呼んでくる奴がいんだよな。
まあ勿論?その度に打った押してきたわけだけど。」

そういって彼は目の前にガッツポーズを決めるとあ、俺のことは"キョウ"って呼んでなと
付け足した。僕も、と言おうとしてはたとあることに気付いた。
僕は周囲の人達からどんな風に呼ばれてたんだろう。

「僕のことは・・好きに呼んで。特にあだ名は決まってないんだ。」



* * * * * * * *


僕らが着いた学校は、全部が全部。山。山。山。に、囲まれたいかにも森。
なところの真ん中に在った。いや、正確には集落よりなんだそうだけど、
都会から来た僕としては山となんら変わり無い場所に在った。
流石にそれは覚悟していたことではあるけれど、実質記憶の上では初めて来た僕にとって
驚きが大きかった。

「やっぱ山ばっかだよなー。」

そんな呑気なことを言っているのは、僕の隣に立っている香だった。
彼とはバスの中で話が弾み結構仲が良くなった、と思う。しかも出身地も僕と同じ東京だった。
何故態々こんなに離れた寮制の高校に来たのかは聞いていないけど。

「町まで下りるのに3時間もかかるしね。・・・山火事とかあったらどーするんだろ。」
「おいおい。そんな怖いこと言うなよー。」

冗談じゃないわ!と香がふざけていると、もう降りる人が全員降りたのか
僕達を乗せてきたバスは、発車した。
車掌さんは親切なことに乗客が殆ど関桜高校の新入生だと分かったのか、
態々停留所から少し離れた学校の目の前でバスを止めてくれていたのだ。
流石、田舎!香がそう小声で言っていたのを僕は聞いた。

「あっきー!寮の入り口で部屋割りのプリント配られるってさ。
俺らも行こうぜ。」

香はそういうと左手でコイコイと動作した。ちなみに"あっきー"というのは、
バスの中で香が作った僕のあだ名だ。"玲"を"レイ"でなく"あきら"と読んで
作ったらしい。僕は結構このあだ名が気に入ってたりする。
何でだか分からないけどしっくりくるあだ名だ。
それに"あきら"と口にした時の香の表情が忘れられなかった。
なんとも形容できないけど、切なそうに感じたのは僕の気のせいじゃない気がする。

早く!といって香が急かすので、思考を中断した僕は、
「今行くー!」
思い出したように早歩きした。





<続ケ>

コメント

亮

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