あれも
これも
それも
みんな
懐かしい
ドコが?
ナンデ?
ナンデだろう。
あれれれ?何で僕泣いてるの?
何?何何何?何でだー!
僕は目の前にいる"ナツカシイ"人に言われ初めて自分が泣いていたことに気付き、
そして混乱していた。
何故自分が泣いているのか。何故初めて会った目の前の人のことを"ナツカシイ"
と感じたのか。
全部が僕の頭の中で雁字搦めになって混乱していた。
「とりあえず目立つから、隣座っていいか?」
「う・・うん・・・。」
僕に話しかけてきた彼は、そう言うと空いている僕の隣の席に腰がけた。
どどどどうしよう。なんか物凄く迷惑をかけた気がするんだけど・・・。
これってやっぱり気のせいじゃないよ・・ね。
ははは・・・。
僕の隣に座った彼は無言のままで、どうすればいいのか混乱している僕もやっぱり無言のままで、
とても居心地がいいとは言えない状況だった。
そういえば、どうしてこんなことになったんだっけ。
あー、寝てた記憶しかないよー。
「あのさ・・・。」
「・・・うん?」
隣の彼は思い詰めたような顔をして僕の方に振り向いて話しかけてきた。
あ、そういえば名前聞いてなかったっけ。って・・僕の所為か。
僕が叫んだりしちゃったから聞きそびれたんだ・・・。
「俺、あんたになんかした?」
・・・・はい?
「前にあった時とかになんかしちゃってたら悪いんだけどさ、うん。
なんか心当たり無いんだけど。初対面、だよな?」
「いや・・そうですけど。」
・・・・・心当たりがあったら何してたんだろう、この人。
なんか物凄く不安になったんだけど。
そんなことを考えている僕とは対称的に、目の前の彼はほっとしたような顔をした。
「よかった・・・。突然泣かれるから俺、なんかしたかと思ったよ。
あ、そうそう。さっきも聞いたんだけどあんたも関桜高校の新入生だろ?」
「・・うん。」
「実は俺もなんだよね。俺は三城香(みき きょう)。あんたは?」
「僕は・・・松澤玲、だよ。」
下の名前を言うのに僕は俯いてしまった。男なのに女の子のような自分の名前が恥ずかしい。
どうせならりょうとかあきらとかもっと男っぽい読み方にしてくれれば良かったのに。
なんとなく思い浮かべた母さんは、心配そうな顔をした女性だった。
・・・面と向かってそんなこと、いえないよなぁ。
はぁ、と思わず溜息がでた。
「もしかして名前にコンプレックス感じちゃってる、とか?」
「・・う。」
隣に居る彼、もとい三城香は無意識になのか拳を顎に当てて、
考え込んでいるような表情で僕に聞いてきた。
む、妙に様になってる・・・。なんか悔しい。・・しかも図星だし。
「うん。どうせならもっと男っぽい名前にしてくれたら良かったのにとか思うよ。
"あきら"とか"りょう"とか。」
僕がちょっと投げやり気味に言うと彼は笑いながら、
「やっぱそう思う?俺の場合はさ、微妙に違うんだけど。
俺の名前って"香り"って書いて"キョウ"って読むわけよ。
だからよく"かおり"ってふざけて呼んでくる奴がいんだよな。
まあ勿論?その度に打った押してきたわけだけど。」
そういって彼は目の前にガッツポーズを決めるとあ、俺のことは"キョウ"って呼んでなと
付け足した。僕も、と言おうとしてはたとあることに気付いた。
僕は周囲の人達からどんな風に呼ばれてたんだろう。
「僕のことは・・好きに呼んで。特にあだ名は決まってないんだ。」
* * * * * * * *
僕らが着いた学校は、全部が全部。山。山。山。に、囲まれたいかにも森。
なところの真ん中に在った。いや、正確には集落よりなんだそうだけど、
都会から来た僕としては山となんら変わり無い場所に在った。
流石にそれは覚悟していたことではあるけれど、実質記憶の上では初めて来た僕にとって
驚きが大きかった。
「やっぱ山ばっかだよなー。」
そんな呑気なことを言っているのは、僕の隣に立っている香だった。
彼とはバスの中で話が弾み結構仲が良くなった、と思う。しかも出身地も僕と同じ東京だった。
何故態々こんなに離れた寮制の高校に来たのかは聞いていないけど。
「町まで下りるのに3時間もかかるしね。・・・山火事とかあったらどーするんだろ。」
「おいおい。そんな怖いこと言うなよー。」
冗談じゃないわ!と香がふざけていると、もう降りる人が全員降りたのか
僕達を乗せてきたバスは、発車した。
車掌さんは親切なことに乗客が殆ど関桜高校の新入生だと分かったのか、
態々停留所から少し離れた学校の目の前でバスを止めてくれていたのだ。
流石、田舎!香がそう小声で言っていたのを僕は聞いた。
「あっきー!寮の入り口で部屋割りのプリント配られるってさ。
俺らも行こうぜ。」
香はそういうと左手でコイコイと動作した。ちなみに"あっきー"というのは、
バスの中で香が作った僕のあだ名だ。"玲"を"レイ"でなく"あきら"と読んで
作ったらしい。僕は結構このあだ名が気に入ってたりする。
何でだか分からないけどしっくりくるあだ名だ。
それに"あきら"と口にした時の香の表情が忘れられなかった。
なんとも形容できないけど、切なそうに感じたのは僕の気のせいじゃない気がする。
早く!といって香が急かすので、思考を中断した僕は、
「今行くー!」
思い出したように早歩きした。
<続ケ>
これも
それも
みんな
懐かしい
ドコが?
ナンデ?
ナンデだろう。
あれれれ?何で僕泣いてるの?
何?何何何?何でだー!
僕は目の前にいる"ナツカシイ"人に言われ初めて自分が泣いていたことに気付き、
そして混乱していた。
何故自分が泣いているのか。何故初めて会った目の前の人のことを"ナツカシイ"
と感じたのか。
全部が僕の頭の中で雁字搦めになって混乱していた。
「とりあえず目立つから、隣座っていいか?」
「う・・うん・・・。」
僕に話しかけてきた彼は、そう言うと空いている僕の隣の席に腰がけた。
どどどどうしよう。なんか物凄く迷惑をかけた気がするんだけど・・・。
これってやっぱり気のせいじゃないよ・・ね。
ははは・・・。
僕の隣に座った彼は無言のままで、どうすればいいのか混乱している僕もやっぱり無言のままで、
とても居心地がいいとは言えない状況だった。
そういえば、どうしてこんなことになったんだっけ。
あー、寝てた記憶しかないよー。
「あのさ・・・。」
「・・・うん?」
隣の彼は思い詰めたような顔をして僕の方に振り向いて話しかけてきた。
あ、そういえば名前聞いてなかったっけ。って・・僕の所為か。
僕が叫んだりしちゃったから聞きそびれたんだ・・・。
「俺、あんたになんかした?」
・・・・はい?
「前にあった時とかになんかしちゃってたら悪いんだけどさ、うん。
なんか心当たり無いんだけど。初対面、だよな?」
「いや・・そうですけど。」
・・・・・心当たりがあったら何してたんだろう、この人。
なんか物凄く不安になったんだけど。
そんなことを考えている僕とは対称的に、目の前の彼はほっとしたような顔をした。
「よかった・・・。突然泣かれるから俺、なんかしたかと思ったよ。
あ、そうそう。さっきも聞いたんだけどあんたも関桜高校の新入生だろ?」
「・・うん。」
「実は俺もなんだよね。俺は三城香(みき きょう)。あんたは?」
「僕は・・・松澤玲、だよ。」
下の名前を言うのに僕は俯いてしまった。男なのに女の子のような自分の名前が恥ずかしい。
どうせならりょうとかあきらとかもっと男っぽい読み方にしてくれれば良かったのに。
なんとなく思い浮かべた母さんは、心配そうな顔をした女性だった。
・・・面と向かってそんなこと、いえないよなぁ。
はぁ、と思わず溜息がでた。
「もしかして名前にコンプレックス感じちゃってる、とか?」
「・・う。」
隣に居る彼、もとい三城香は無意識になのか拳を顎に当てて、
考え込んでいるような表情で僕に聞いてきた。
む、妙に様になってる・・・。なんか悔しい。・・しかも図星だし。
「うん。どうせならもっと男っぽい名前にしてくれたら良かったのにとか思うよ。
"あきら"とか"りょう"とか。」
僕がちょっと投げやり気味に言うと彼は笑いながら、
「やっぱそう思う?俺の場合はさ、微妙に違うんだけど。
俺の名前って"香り"って書いて"キョウ"って読むわけよ。
だからよく"かおり"ってふざけて呼んでくる奴がいんだよな。
まあ勿論?その度に打った押してきたわけだけど。」
そういって彼は目の前にガッツポーズを決めるとあ、俺のことは"キョウ"って呼んでなと
付け足した。僕も、と言おうとしてはたとあることに気付いた。
僕は周囲の人達からどんな風に呼ばれてたんだろう。
「僕のことは・・好きに呼んで。特にあだ名は決まってないんだ。」
* * * * * * * *
僕らが着いた学校は、全部が全部。山。山。山。に、囲まれたいかにも森。
なところの真ん中に在った。いや、正確には集落よりなんだそうだけど、
都会から来た僕としては山となんら変わり無い場所に在った。
流石にそれは覚悟していたことではあるけれど、実質記憶の上では初めて来た僕にとって
驚きが大きかった。
「やっぱ山ばっかだよなー。」
そんな呑気なことを言っているのは、僕の隣に立っている香だった。
彼とはバスの中で話が弾み結構仲が良くなった、と思う。しかも出身地も僕と同じ東京だった。
何故態々こんなに離れた寮制の高校に来たのかは聞いていないけど。
「町まで下りるのに3時間もかかるしね。・・・山火事とかあったらどーするんだろ。」
「おいおい。そんな怖いこと言うなよー。」
冗談じゃないわ!と香がふざけていると、もう降りる人が全員降りたのか
僕達を乗せてきたバスは、発車した。
車掌さんは親切なことに乗客が殆ど関桜高校の新入生だと分かったのか、
態々停留所から少し離れた学校の目の前でバスを止めてくれていたのだ。
流石、田舎!香がそう小声で言っていたのを僕は聞いた。
「あっきー!寮の入り口で部屋割りのプリント配られるってさ。
俺らも行こうぜ。」
香はそういうと左手でコイコイと動作した。ちなみに"あっきー"というのは、
バスの中で香が作った僕のあだ名だ。"玲"を"レイ"でなく"あきら"と読んで
作ったらしい。僕は結構このあだ名が気に入ってたりする。
何でだか分からないけどしっくりくるあだ名だ。
それに"あきら"と口にした時の香の表情が忘れられなかった。
なんとも形容できないけど、切なそうに感じたのは僕の気のせいじゃない気がする。
早く!といって香が急かすので、思考を中断した僕は、
「今行くー!」
思い出したように早歩きした。
<続ケ>
天使は突然姿を消した。
俺の目の前で。
|
いつもあの笑顔が
隣を向けば見ることができて
そしてそれが、
これからも永遠に続くものだと
信じてた。
|
だけど
俺の天使は消えたのだ。
俺を乗せた学校の方へと向かっているバスは、相変わらず田んぼや畑や山に囲まれた道を通っていて、
流石の俺も外の景色に飽き始めていた。なら寝ていればいいじゃないか。
そう思うのだが、何故か今はそれができない。これから3年間を過ごすことになっている
学校に近づいてきているから興奮しているのだろうか。
眠いはずの脳が学校に近づくに連れて段々冴えてきた。くそ、眠れねぇ。
とりあえず車内を見回すと、俺と同じ目的で乗ってるようなやつ
(つまりは関桜高校の新入生ってことなんだけど)は、俺を除いて5、6人居た。
あ、7人だ。しかも1人を除いては皆友達同士で来ているようだ。
1人は窓に寄りかかるようにして眠っている。
俺も今のうちに話し相手位作っとかねぇとな。
座ってるとこもあの寝てるやつが一番近いしあいつに話しかけるか。
俺は相手の迷惑は二の次にとにかく話しかけることにした。
うわぁ〜。こいつ・・・男、だよなぁ。無駄に睫毛長すぎ・・・。
俺は目の前で眠りこけているやつを見て溜息をついた。
いやまじ長すぎだって。
思わずしげしげと覗いてしまった後で、目の前のやつが身動ぎをしたので
俺は慌ててやつに声をかけた。だけだった。・・・・・うん。ってゆうかそのはず。
* * * * * * *
「お前も関桜(せきおう)高校の新学生だ・・ろ・・・?」
俺がそう言いかけながらやつに聞くとあろうことかやつは、
無駄にでかい双眼から涙をぽろぽろ、ぼろぼろ、ぼとぼと・・・・
とにかく涙したのだ。
もちろんちょっと所かかなり面食らった俺はしばらくの間
奴の顔を呆けた顔で見てしまっていた。なんだって俺が知らないやつに、
しかも男に泣かれなくちゃなんねぇんだ。
・・・・俺なんかしたか?
俺が、目の前のやつが自分の涙で濡れた頬を拭こうともせずに
きょとんとしていることに気づいた時には涙は既に止まっていた。
・・・もしかしてこいつ、自分が泣いてたことに気付いてない?
「・・なんで泣いてんの?」
もっともな質問だと思う。思うんだけど・・。
やつは、思いっきり頭の上にクエスチョンマークを乗せて自分の手を
自分の頬に移動させて。
「えええええええええええええええ!?」
普段、利用する人が少ないからなんだろう。普通のバスよりも一回り小さいこのバスで、
やつの声は乗客全員の視線を集めた。
<続ケ>
俺の目の前で。
|
いつもあの笑顔が
隣を向けば見ることができて
そしてそれが、
これからも永遠に続くものだと
信じてた。
|
だけど
俺の天使は消えたのだ。
俺を乗せた学校の方へと向かっているバスは、相変わらず田んぼや畑や山に囲まれた道を通っていて、
流石の俺も外の景色に飽き始めていた。なら寝ていればいいじゃないか。
そう思うのだが、何故か今はそれができない。これから3年間を過ごすことになっている
学校に近づいてきているから興奮しているのだろうか。
眠いはずの脳が学校に近づくに連れて段々冴えてきた。くそ、眠れねぇ。
とりあえず車内を見回すと、俺と同じ目的で乗ってるようなやつ
(つまりは関桜高校の新入生ってことなんだけど)は、俺を除いて5、6人居た。
あ、7人だ。しかも1人を除いては皆友達同士で来ているようだ。
1人は窓に寄りかかるようにして眠っている。
俺も今のうちに話し相手位作っとかねぇとな。
座ってるとこもあの寝てるやつが一番近いしあいつに話しかけるか。
俺は相手の迷惑は二の次にとにかく話しかけることにした。
うわぁ〜。こいつ・・・男、だよなぁ。無駄に睫毛長すぎ・・・。
俺は目の前で眠りこけているやつを見て溜息をついた。
いやまじ長すぎだって。
思わずしげしげと覗いてしまった後で、目の前のやつが身動ぎをしたので
俺は慌ててやつに声をかけた。だけだった。・・・・・うん。ってゆうかそのはず。
* * * * * * *
「お前も関桜(せきおう)高校の新学生だ・・ろ・・・?」
俺がそう言いかけながらやつに聞くとあろうことかやつは、
無駄にでかい双眼から涙をぽろぽろ、ぼろぼろ、ぼとぼと・・・・
とにかく涙したのだ。
もちろんちょっと所かかなり面食らった俺はしばらくの間
奴の顔を呆けた顔で見てしまっていた。なんだって俺が知らないやつに、
しかも男に泣かれなくちゃなんねぇんだ。
・・・・俺なんかしたか?
俺が、目の前のやつが自分の涙で濡れた頬を拭こうともせずに
きょとんとしていることに気づいた時には涙は既に止まっていた。
・・・もしかしてこいつ、自分が泣いてたことに気付いてない?
「・・なんで泣いてんの?」
もっともな質問だと思う。思うんだけど・・。
やつは、思いっきり頭の上にクエスチョンマークを乗せて自分の手を
自分の頬に移動させて。
「えええええええええええええええ!?」
普段、利用する人が少ないからなんだろう。普通のバスよりも一回り小さいこのバスで、
やつの声は乗客全員の視線を集めた。
<続ケ>
何が?
知らない。
何時?
知らない。
何処で?
知らない。
なんで?
わからない。
けど、懐かしかった。
都会というわけではない。かといって山々に囲まれた田舎でもない。
そんな町の駅に僕の乗った電車は停まった。
ここからまたバスに乗り換えて3時間ほど揺られる事となる。
そして其処には、僕がこれから高校生活を過ごすことになっている高校がある。
今日から―正確には明日からだが―僕はその学校の寮生となる。
僕の名前は、松澤玲(まつざわ れい)。一見すると女の子の名前みたいだけど、
僕は女の子じゃない。列記とした男だ。・・・と思いたい。
でも、本当に僕は男なのだろうか。時々違和感を感じる時がある。
僕は電車を降りて、少し止まりかけていた足を再び動かした。
そうだ。今何時だっけ?えーと。今は5時32分で、バスがえーと。
なになに?5時35分に来るんだね。ふんふん。で、後2分で来るわけだ?
って・・・え・・・。
学校の近くまで走るバスは一日に1本しか走らないんだった!
今乗り送れたらまた明日の朝までこない!
「・・うわぁっ・・・・。」
僕は駅員の一人しか居ない改札を駆け抜けて行った。
* * * * * *
バスに乗ってどの位経っただろうか。
最初は数分間隔で停留所に停まっていたバスが次第に停まらなくなり、
外に見える風景も山や畑と田舎のそれになっていた。
バスの中にはちらほらと僕と同い年ぐらいの人が見られた。多分僕と同じ理由で来た人達だろう。
特に話す人も居ない僕は、変わらない窓の外の景色に視線を向けていた。
その間、今日の朝―といっても夜中といっていい時刻―に家を後にした僕を
心配そうな顔で見送った母さんの顔が思い出された。
母さんは最後まで僕の寮生活を反対していた。反対した所で、僕が受験して合格したのは
今僕が向かっている学校だけだったのだけれど。
母さんが反対した理由は、態々考えなくても分かる。
僕が記憶喪失になってしまったからだった。
正直、僕は母さんのことを母さんだと知るまで只の"女性"としか認識していなかったし、
今でも母さんに向かって『母さん』と呼びかけることに少なからず抵抗がある。
その上僕は、勉学や常識、流行などに関して、つまり知識に措いてはあるものの。
それまでの自分の人間関係や自分に関することは全て記憶から抜け落ちていた。
自分の名前どころか性別さえもわからなかったほど。
「・・・ぃ・・ぉい。」
何かが聞こえた、気がした。懐かしい声。
何時か何処かで聞いた事のある声。懐かしい。この前聞いたのは何時だっけ?
そう言えばいつもこーやって起こされてたなぁ、あいつに。
・・・いつも?あいつ?
「・・おい。」
「・・・・ぁい?」
僕は誰かに肩を揺すられていることに気付き目を覚ました。
目の前に居たのは僕とそう変わらない年頃の少年で。
「お前も関桜(せきおう)高校の新入生だ・・ろ・・・?」
初めて会った少年の顔を凝視して硬直していた僕は、
突然湧き上がってきた感情が何なのか気付くまで
自分が泣いていることに気が付かなかった。
<続ケ>
知らない。
何時?
知らない。
何処で?
知らない。
なんで?
わからない。
けど、懐かしかった。
都会というわけではない。かといって山々に囲まれた田舎でもない。
そんな町の駅に僕の乗った電車は停まった。
ここからまたバスに乗り換えて3時間ほど揺られる事となる。
そして其処には、僕がこれから高校生活を過ごすことになっている高校がある。
今日から―正確には明日からだが―僕はその学校の寮生となる。
僕の名前は、松澤玲(まつざわ れい)。一見すると女の子の名前みたいだけど、
僕は女の子じゃない。列記とした男だ。・・・と思いたい。
でも、本当に僕は男なのだろうか。時々違和感を感じる時がある。
僕は電車を降りて、少し止まりかけていた足を再び動かした。
そうだ。今何時だっけ?えーと。今は5時32分で、バスがえーと。
なになに?5時35分に来るんだね。ふんふん。で、後2分で来るわけだ?
って・・・え・・・。
学校の近くまで走るバスは一日に1本しか走らないんだった!
今乗り送れたらまた明日の朝までこない!
「・・うわぁっ・・・・。」
僕は駅員の一人しか居ない改札を駆け抜けて行った。
* * * * * *
バスに乗ってどの位経っただろうか。
最初は数分間隔で停留所に停まっていたバスが次第に停まらなくなり、
外に見える風景も山や畑と田舎のそれになっていた。
バスの中にはちらほらと僕と同い年ぐらいの人が見られた。多分僕と同じ理由で来た人達だろう。
特に話す人も居ない僕は、変わらない窓の外の景色に視線を向けていた。
その間、今日の朝―といっても夜中といっていい時刻―に家を後にした僕を
心配そうな顔で見送った母さんの顔が思い出された。
母さんは最後まで僕の寮生活を反対していた。反対した所で、僕が受験して合格したのは
今僕が向かっている学校だけだったのだけれど。
母さんが反対した理由は、態々考えなくても分かる。
僕が記憶喪失になってしまったからだった。
正直、僕は母さんのことを母さんだと知るまで只の"女性"としか認識していなかったし、
今でも母さんに向かって『母さん』と呼びかけることに少なからず抵抗がある。
その上僕は、勉学や常識、流行などに関して、つまり知識に措いてはあるものの。
それまでの自分の人間関係や自分に関することは全て記憶から抜け落ちていた。
自分の名前どころか性別さえもわからなかったほど。
「・・・ぃ・・ぉい。」
何かが聞こえた、気がした。懐かしい声。
何時か何処かで聞いた事のある声。懐かしい。この前聞いたのは何時だっけ?
そう言えばいつもこーやって起こされてたなぁ、あいつに。
・・・いつも?あいつ?
「・・おい。」
「・・・・ぁい?」
僕は誰かに肩を揺すられていることに気付き目を覚ました。
目の前に居たのは僕とそう変わらない年頃の少年で。
「お前も関桜(せきおう)高校の新入生だ・・ろ・・・?」
初めて会った少年の顔を凝視して硬直していた僕は、
突然湧き上がってきた感情が何なのか気付くまで
自分が泣いていることに気が付かなかった。
<続ケ>
早く行かなきゃ。
とにかく急いで。
彼が待ってる。
(彼って?)
彼は彼。
(何処で?)
あれ?
自分が誰だか思い出せない。
「誠に残念なことですが・・・」
「はぁ・・・いえ、こちらこそお世話になって。」
誰かの話し声で目が覚めた。
何を話しているのか聞き取ることはできるのに理解ができない。
右から左に抜けて行くようだ。
なんだか頭の中が鈍器で殴られでもしたかのようにずっしりと重かった。
多分このせいだと思う。序でに言えば起き上がる気力もない。
無意識に見つめていた天井を今度は意識的に見た。
白い塗料で塗られた天井。白。白。白。
「病院か・・・。」
なんとなく無意識に言葉がでた。薬品のにおいがする病院独特のにおいだ、そう思っていた。
そうしたらちょっと顔に疲れの浮かんだ女性が近づいてきて、言った。
「レイ!やっと目が覚めたのね。」
目だけを動かして見るが、目に涙を浮かべて此方を見る女性に見覚えはない。
そして自分が"レイ"と呼ばれたことに気付いた。どうやら自分の名前は"レイ"というらしい。
そして今更に気付いた。
自分は自分の名前さえも知らなかったことに。
「あの・・・・・」
「なぁに?どこか痛いの?それともおなかが空いたの?」
女性は息も吐かずに言い切ると、今度は"レイ"の言葉を待った。
「貴女は・・私のお母さん、なんですか?」
なんとも間抜けな質問だ。でも自分にとってはとても意味のある質問だった。
世間ではこれを記憶喪失というのだろう。
"レイ"にはこの状況がわからなかった。何故自分がこの女性に心配されているのか。
何故自分が病院で寝ているのか。自分は何者なのか。
女性に言われて初めてわかった"レイ"という名前以外に何もわからなかった。
いや、知らなかった。
だからこそ聞いたのだ。
あなたは自分の母親なのか否か。
そしてそれを問う際に新たな疑問に行きついた。
自分は"男"なのか"女"なのか。
女性の涙の浮んだ目が見開かれて、女性の目が充血していたことに気が付いた。
<続ケ>
とにかく急いで。
彼が待ってる。
(彼って?)
彼は彼。
(何処で?)
あれ?
自分が誰だか思い出せない。
「誠に残念なことですが・・・」
「はぁ・・・いえ、こちらこそお世話になって。」
誰かの話し声で目が覚めた。
何を話しているのか聞き取ることはできるのに理解ができない。
右から左に抜けて行くようだ。
なんだか頭の中が鈍器で殴られでもしたかのようにずっしりと重かった。
多分このせいだと思う。序でに言えば起き上がる気力もない。
無意識に見つめていた天井を今度は意識的に見た。
白い塗料で塗られた天井。白。白。白。
「病院か・・・。」
なんとなく無意識に言葉がでた。薬品のにおいがする病院独特のにおいだ、そう思っていた。
そうしたらちょっと顔に疲れの浮かんだ女性が近づいてきて、言った。
「レイ!やっと目が覚めたのね。」
目だけを動かして見るが、目に涙を浮かべて此方を見る女性に見覚えはない。
そして自分が"レイ"と呼ばれたことに気付いた。どうやら自分の名前は"レイ"というらしい。
そして今更に気付いた。
自分は自分の名前さえも知らなかったことに。
「あの・・・・・」
「なぁに?どこか痛いの?それともおなかが空いたの?」
女性は息も吐かずに言い切ると、今度は"レイ"の言葉を待った。
「貴女は・・私のお母さん、なんですか?」
なんとも間抜けな質問だ。でも自分にとってはとても意味のある質問だった。
世間ではこれを記憶喪失というのだろう。
"レイ"にはこの状況がわからなかった。何故自分がこの女性に心配されているのか。
何故自分が病院で寝ているのか。自分は何者なのか。
女性に言われて初めてわかった"レイ"という名前以外に何もわからなかった。
いや、知らなかった。
だからこそ聞いたのだ。
あなたは自分の母親なのか否か。
そしてそれを問う際に新たな疑問に行きついた。
自分は"男"なのか"女"なのか。
女性の涙の浮んだ目が見開かれて、女性の目が充血していたことに気が付いた。
<続ケ>
私の幸せを返して。
あの楽しかった毎日。
(幸せって?)
私の幸せは。
(私って何?)
何だろう。
幸せって何?
私って何?
私の幸せって何?
何ってどうして?
どうしてって何?
何って何?
もーいいや。
序章
私こと渡辺玲(あきら)は、自分の名前に物凄くコンプレックスを抱いていた。
女であるのに普通男に付けるだろう名前が私には付いている。
それだった。
せめて読みを『れい』とかにしてくれればまだ女の子っぽい名前なのに。
と、何度親を恨んだかわからない。しかも挙句の果てにはこの父親似の顔だ。
それだけならいいのに図体がでかいのまで父親に似てしまった。
流石にがっちりしてる筋肉質なマッチョ・・・
ってなわけじゃないけど。ってゆうかそんなんだったら自殺してると思う、多分。
一応華奢な部類には入るんだろうけどひょろりと伸びた背。
他の女の子達はあんなにちっちゃくて可愛いのに。
そんな私に背で負けて悔しいらしいクラスメートの男子は、ことごとく私の名前とマッチしている
私の体型をからかいの的としてきた。
女の子達はそんな私のことをカッコイイとか気にすることない、とか言って慰めて
くれていたけど私にとってはやっぱりそれは単なる慰めでしかなくて、
やっぱり普通の女の子と同じ体型になりたくて仕様がなかった。
泣いたこともあった。
もちろん人前でなく家で独りの時、だったけれど。
でも私が中学生に上がる頃には成長期の男子達もぐんぐん私の背を追い抜いて、
私の背の高さもあまり目立たなくなり、
(私の背より高い人限定だったけれど)それなりに恋もしたし、付き合ったりもした。
その頃にはもう私の背や名前でからかう奴もいなくなっていたし、
(逆にそのことで深く詫びられて困った位で)毎日が楽しかった。
そして無事に中学を卒業した、その日。
まさか自分の運命が180度変わってしまうなんて、私はその日まで知る由もなかった。
全くの赤の他人で。
だけど下の名前だけが同じ漢字で。
しかも私が望んでた読み方をする名前で。
私とは正反対に女の子みたいな顔をした男の子と、
嬉しくもない出会いをして。
そして・・・・
<続ケ>
++++++
以前亮が書いた書きかけの小説・・・。
また、暇な時に更新していこうと思いますなり。
ってことで今日一気にUPUP!
あの楽しかった毎日。
(幸せって?)
私の幸せは。
(私って何?)
何だろう。
幸せって何?
私って何?
私の幸せって何?
何ってどうして?
どうしてって何?
何って何?
もーいいや。
序章
私こと渡辺玲(あきら)は、自分の名前に物凄くコンプレックスを抱いていた。
女であるのに普通男に付けるだろう名前が私には付いている。
それだった。
せめて読みを『れい』とかにしてくれればまだ女の子っぽい名前なのに。
と、何度親を恨んだかわからない。しかも挙句の果てにはこの父親似の顔だ。
それだけならいいのに図体がでかいのまで父親に似てしまった。
流石にがっちりしてる筋肉質なマッチョ・・・
ってなわけじゃないけど。ってゆうかそんなんだったら自殺してると思う、多分。
一応華奢な部類には入るんだろうけどひょろりと伸びた背。
他の女の子達はあんなにちっちゃくて可愛いのに。
そんな私に背で負けて悔しいらしいクラスメートの男子は、ことごとく私の名前とマッチしている
私の体型をからかいの的としてきた。
女の子達はそんな私のことをカッコイイとか気にすることない、とか言って慰めて
くれていたけど私にとってはやっぱりそれは単なる慰めでしかなくて、
やっぱり普通の女の子と同じ体型になりたくて仕様がなかった。
泣いたこともあった。
もちろん人前でなく家で独りの時、だったけれど。
でも私が中学生に上がる頃には成長期の男子達もぐんぐん私の背を追い抜いて、
私の背の高さもあまり目立たなくなり、
(私の背より高い人限定だったけれど)それなりに恋もしたし、付き合ったりもした。
その頃にはもう私の背や名前でからかう奴もいなくなっていたし、
(逆にそのことで深く詫びられて困った位で)毎日が楽しかった。
そして無事に中学を卒業した、その日。
まさか自分の運命が180度変わってしまうなんて、私はその日まで知る由もなかった。
全くの赤の他人で。
だけど下の名前だけが同じ漢字で。
しかも私が望んでた読み方をする名前で。
私とは正反対に女の子みたいな顔をした男の子と、
嬉しくもない出会いをして。
そして・・・・
<続ケ>
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以前亮が書いた書きかけの小説・・・。
また、暇な時に更新していこうと思いますなり。
ってことで今日一気にUPUP!